京都府立医科大学、摂南大学、プリメディカの三者共同研究「腸内細菌叢研究データベースの統合的解析による腸内環境評価システムの開発」に関する論文が2022年3月20日付けで「Microorganisms」誌に掲載されました。健康な人から様々な疾患を持つ人まで、多数の日本人を対象とした腸内細菌叢プロファイルに関する報告は、我々の知る限り、本研究が初めてとなる成果です。
(URL:https://www.mdpi.com/2076-2607/10/3/664/htm)
【タイトル】
「Typing of the Gut Microbiota Community in Japanese Subjects」
【背景】
近年、分子生物学的手法を駆使した腸内細菌叢解析の発達により、腸内細菌叢の全容が明らかにされつつあり、様々な疾病との関わりも示唆されていた。しかし、従来の腸内細菌叢の研究においては、人種や食生活など、背景にある環境因子の影響を大きく受けることや、測定においても前処理技術などの違いにより結果の解釈が分かれることが課題となっていた。
【方法】
2016年11月から2017年4月にかけて、京都府立医科大学附属病院に来院した病状の異なる(健常者283名を含む)14歳以上101歳未満の男女、計1,803名を対象とし、測定手法を統一したうえで腸内細菌叢を測定/解析を実施した。
【結果】
AI(機械学習)を用いた解析によって日本人の腸内細菌叢の最適分類数は5タイプ(PAM法)もしくは15タイプ(DMM法)での分類が最適と定義された。5つのタイプ分けにおいてはType Eに最も健常者が多く、Type AとType Dの健常者数は他の3つのタイプに比べて著しく少なかった。
最も健常者が多かったType Eのプロファイルをもとに、各疾患のオッズ比を算出した。健常者が少ないType A、 Type Dでは、様々な疾患との関連が示された。Type Aでは、循環器系疾患、神経系疾患、生活習慣病で特に高いオッズ比を示し、Type Dでは、IBD、機能性胃腸障害で高いオッズ比を示した。